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国産羊肉・国産ラム肉はなぜ希少?輸入羊肉との違いと、仕入れてわかったこと

一頭の羊肉を部位ごとに切り分ける羊肉専門店の様子

国産羊肉と聞くと、「希少」「高級」「輸入羊肉よりおいしい」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。

確かに、日本で流通している羊肉の中で国産はごくわずかです。

農林水産省の資料では、羊肉の国内生産量は93トン、輸入量は20,537トン。国内生産と輸入を合わせた数量に占める国産の割合は約0.5%です。

ただ、私たちが実際に国産羊を扱ってきて感じるおもしろさは、「珍しいから」だけではありません。

「麻布の羊」「市ヶ谷の羊」を展開する羊肉専門ブランド「羊組」では、これまで北海道を中心に東北など、10以上の国内生産者・仕入先から羊を扱ってきました。

一頭単位で仕入れることもあり、国産ラムだけでなくホゲットやマトンを扱う機会もあります。

そこで強く感じるのが、

「国産羊」という一つの味はない。

ということです。

同じラムでも同じではありません。同じホゲットでも同じではありません。

牧場、食べているもの、入荷する時期、育成期間。一頭ごとの大きさや脂の付き方にも違いがあります。

さらに、店に届いてからも、骨を外し、部位を分け、提供できる状態まで切り出す工程があります。

この記事では、国産羊がなぜ希少なのかという数字だけではなく、一頭の羊が店に届いてから皿に乗るまで、私たちが実際に見ている違いについて紹介します。

目次

国産羊肉・国産ラム肉とは?

この記事では、日本国内で飼養・生産された羊の肉を「国産羊肉」として紹介します。

一方で、「ラム」「ホゲット」「マトン」は産地ではなく、羊の成長段階による呼び方です。

つまり、「国産羊肉」と「国産ラム肉」は同じ意味ではありません。

国内で育てられた羊にもラムがいれば、ホゲット、マトンもいます。

私たちもこれまで、国産ラムだけでなく国産ホゲットやマトンを扱ってきました。

国内のめん羊は北海道での飼養が最も多く、農林水産省の資料では全国24,741頭のうち北海道が13,012頭。約53%を占めています。

私たちが扱ってきた国産羊も北海道産が中心です。

ただ、北海道産だから同じ味になるわけではありません。

同じ地域でも牧場が違えば育て方は違いますし、同じ牧場の羊でも一頭ずつ状態は違います。

産地は、その羊を知るための一つの情報です。

でも、産地だけで羊の味が決まるわけではありません。

日本で流通する羊肉のうち国産は約0.5%

国産羊肉が「希少」と言われる理由は、そもそもの生産量が非常に少ないことにあります。

農林水産省「めん羊・山羊をめぐる情勢」(令和8年8月)では、羊肉の国内生産量は93トン、輸入量は20,537トンです。

項目数量・割合
国内生産量93トン
輸入量20,537トン
国内生産+輸入20,630トン
国内産割合約0.5%
主な輸入国オーストラリア、ニュージーランド

また、国内のめん羊飼養頭数は24,741頭、飼養戸数は960戸です。

牛や豚、鶏と比べると、生産・流通の規模自体が小さい食材です。

そのため、国産羊は年間を通して同じ部位、同じ重量、同じ規格のものを安定的に仕入れられるとは限りません。

一方で、日本で日常的に羊肉を食べられる環境を支えているのが輸入羊肉です。

主な輸入先はオーストラリアとニュージーランド。安定した流通があるからこそ、飲食店も継続して羊肉を提供できます。

国産と輸入は、どちらかがもう一方の代用品という関係ではありません。

それぞれに違う役割があります。

国産羊肉と輸入羊肉は何が違う?

「国産羊はクセがなく、輸入羊肉は臭い」

そう思われることがありますが、私たちが扱ってきた感覚では、そこまで単純には分けられません。

国産でも羊らしい香りがはっきりした羊はありますし、外国産ラムでも香りが穏やかで食べやすいものはあります。

羊肉の味や香りは、国産か輸入かという一点だけで決まるものではありません。

年齢、牧場、食べているもの、育成期間、脂の付き方、部位、一頭ごとの個体差など、いくつもの要素が重なっています。

飲食店として大きく違いを感じるのは、むしろ仕入れたあとの扱いです。

私たちが扱う外国産ラムでは、必要な部位や規格を選び、比較的安定して仕入れられるものが中心です。

一方で国産羊は、一頭単位で仕入れる場合があります。

そうなると、届いた羊を見てから、

どのくらいの大きさなのか。

どれくらい脂が付いているのか。

どの部位をどんな形で提供するのか。

を考える必要があります。

国産か輸入かだけで「どちらがおいしい」と決めるより、その羊がどんな羊なのかを見る。

私たちはその方が自然だと考えています。

10以上の国内生産者・仕入先を扱って分かった、一頭ごとの違い

国産羊を扱い始めた頃は、私たち自身も「国産」という言葉を今より大きく捉えていました。

ただ、扱う羊や生産者が増えるほど、その見方は変わっていきました。

同じラムでも、大きさがかなり違うことがあります。

同じホゲットでも同じです。

牧場が違えば、食べているものや育て方も違います。

同じ牧場でも、入荷する時期や育成期間によって、一頭の大きさや脂の付き方に違いを感じます。

特にラムやホゲットは、実際に一頭ずつ扱っていると、大きさの差を感じる場面が少なくありません。

一方、羊組でこれまで扱ってきた範囲では、成羊であるマトンは、ラムやホゲットほど成長段階による大きさの差を強く感じないことが多いです。

もちろん、マトンも同じではありません。

風味、食感、肉の味、脂の付き方には一頭ごとの違いがあります。

だから、ラムだからこう、ホゲットだからこう、マトンだからこう、と年齢区分だけで味を決めることはできません。

10以上の国内生産者・仕入先から羊を扱ってきて、今感じているのは、

「国産羊がおいしい」ではなく、「この羊がおいしい」と考える方が自然です。

ということです。

産地も、生産者も、年齢も大切です。

ただ、最後に私たちが扱うのは、目の前に届いた一頭です。

その羊を実際に見て、触って、切って、焼いてみる。

そこまでやって初めて分かることがあります。

一頭で仕入れると、店の仕事はそこから始まる

一頭単位で仕入れた羊肉を確認する羊肉専門店スタッフ

一頭の羊を仕入れたからといって、そのままジンギスカンとして提供できるわけではありません。

羊組では、一頭の状態で仕入れた羊を店舗で脱骨し、部位ごとに切り分け、そこからさらに提供できる形までカットすることがあります。

脱骨は、ただ骨を外せばいいわけではない

脱骨とは、肉から骨を外していく作業です。

言葉にすると単純ですが、慣れていないときれいに外すのは簡単ではありません。

骨の形に沿って肉を外していきますが、雑に作業すれば骨に肉が残ります。

骨に肉を残せば、その分だけ商品として使える肉が減ります。

飲食店でいえば、歩留まりにそのまま影響します。

だから、できるだけ骨に肉を残さず、きれいに外していく必要があります。

大きさが違えば、同じ感覚では扱えない

同じラムやホゲットでも、一頭の大きさは同じではありません。

大きさが違えば、骨格も、肉の付き方も、脂の付き方も同じではありません。

基本となる工程は同じでも、一頭ずつ実際の状態を見ながら作業します。

私たちの場合、羊の大きさや状態を見ながら、脱骨して部位ごとに切り出していきます。

手早く、きれいに処理する

脱骨は、ゆっくり時間をかければいい作業でもありません。

肉を必要以上に長く室温や空気にさらさないためにも、状態を見ながらできるだけ手早く処理することを意識しています。

同時に、急いで骨に肉を残してしまっても意味がありません。

速さと丁寧さの両方が必要です。

骨を外したあとも工程は続く

脱骨したら終わりではありません。

骨を外したあと、肩、ロース、モモなどの部位に分けます。

さらに、それぞれを実際にお客様へ提供できる形へ切っていきます。

骨を外す。

部位ごとに分ける。

部位を整形する。

提供する大きさに切る。

一頭の羊が皿に乗るまでには、いくつもの工程があります。

出荷する段階で脱骨され、部位ごとに分けられた状態で仕入れる方法もあります。

私たちの知る範囲では、ジンギスカン店でも、店舗で一頭を脱骨するのではなく、部位ごとに分けられた状態で仕入れるケースは珍しくない印象です。

だからこそ、自分たちで一頭を扱うと、その羊の大きさや脂、肉の付き方まで直接見ることになります。

仕入れた一頭を見て、その羊に合わせて商品にしていく。

ここは、一頭単位で羊を扱うからこそ見える部分です。

提供時のカットも、部位と肉の状態で変える

部位まで切り分けたあとも、すべての肉を同じ厚さに切ればいいわけではありません。

肩ロース、ロース、モモなど、部位によって肉質や脂の入り方は違います。

厚めに切った方が肉の食感や味を楽しみやすい部位もあれば、少し薄めにした方が食べやすいものもあります。

もちろん、どの部位を何mmで切るかという考え方は店によって違います。

羊組でも、「この部位だから必ずこの厚さ」と機械的に決めるだけではなく、部位の特徴やそのときの肉の状態を見ながらカットを考えます。

一頭の大きさが違えば、同じ部位でも取れる肉の大きさは変わります。

脂の付き方が違えば、食べたときの印象も変わります。

だから、一頭で仕入れるということは、珍しい羊を仕入れるだけの話ではありません。

仕入れた羊を見て、

骨を外す。

部位を分ける。

肉を整える。

その部位に合った形に切る。

そしてようやく、お客様に提供できる状態になります。

この工程まで含めて、私たちは羊肉を扱う仕事だと考えています。

まとめ|国産羊肉のおもしろさは「希少」だけではない

国産羊肉は、日本で流通する羊肉の約0.5%。

希少なのは事実です。

ただ、私たちが実際に扱って感じる魅力は、希少性だけではありません。

同じラムでも違う。

同じホゲットでも違う。

牧場、食べているもの、時期、育成期間によって、大きさや脂の付き方にも違いがあります。

さらに一頭で仕入れれば、脱骨し、部位を切り分け、提供できる状態までカットする必要があります。

その工程を通して、一頭ごとの違いがよりはっきり見えてきます。

羊肉は、産地の名前だけでは語り切れない食材です。

「国産」という言葉だけを見るのではなく、その羊がどんな羊なのか。

そこまで見ると、羊肉はもっとおもしろくなります。

羊組では、外国産ラムを軸にしながら、入荷状況に応じて国産羊やホゲット、マトンも扱っています。

国産羊の入荷・提供状況は時期によって異なるため、気になる方は各店舗でご確認ください。

麻布の羊

麻布十番でジンギスカンとさまざまな羊肉を楽しめる羊肉専門店。

市ヶ谷の羊

市ヶ谷・麹町エリアでジンギスカンと羊肉を楽しめる羊肉専門店。

参考資料

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