「ラム肉って、部位によってそんなに違うんですか?」
羊肉を扱っていると、よく聞かれる質問の一つです。
牛肉ほど部位名が一般的ではないため、「ラム」という一つの肉として見られることも多い羊肉。
でも実際には、肩ロース、ロース、モモ、ランプ、ウデ、バラなど、部位によって脂の付き方も、やわらかさも、噛んだときの印象も変わります。
同じ一頭の中にも、脂の旨みを楽しみやすい部位もあれば、赤身の味を感じやすい部位もあります。
さらに、同じ部位だからといって、毎回まったく同じ肉になるわけでもありません。
「麻布の羊」「市ヶ谷の羊」を展開する羊肉専門ブランド「羊組」では、輸入ラムだけでなく、国産のラム・ホゲット・マトンなど、さまざまな羊を扱ってきました。
国産羊では一頭単位で仕入れ、入荷する状態によっては骨付きの肉を店側で脱骨・整形することもあります。
この記事では、代表的な羊肉の部位と味・食感の特徴に加えて、実際に一頭の羊を扱ってきた中で感じる部位ごとの違いまで紹介します。
羊肉の部位はどう違う?まずは特徴を一覧で
代表的な部位を大まかに整理すると、次のようになります。
| 部位 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 肩ロース | 赤身と脂のバランスを感じやすい | 脂も赤身も楽しみたい |
| ロース | 比較的やわらかく、きめ細かい食感 | やわらかい羊肉が好き |
| モモ | 脂が控えめで、赤身の味を感じやすい | 赤身を楽しみたい |
| ランプ | 赤身中心で、やわらかさとのバランスがいい | 赤身もやわらかさも欲しい |
| ウデ | 肉らしい食感と旨みを感じやすい | 噛んだときの肉感が好き |
| バラ | 脂の存在感があり、羊の脂の旨みを感じやすい | 脂のある羊肉が好き |
ただし、これはあくまで大まかな特徴です。
羊肉は、部位だけで味が決まるわけではありません。
ラム・ホゲット・マトンという年齢・成長段階の違いに加えて、品種、育った環境、個体差、脂の付き方などでも印象は変わります。
また、部位の呼び方や分け方も、産地や仕入先、流通の仕方によって多少異なる場合があります。
「どの部位が一番おいしいか」ではなく、「自分はどの部位が好きか」で考える方が、羊肉はおもしろい。
私たちはそう考えています。
肩ロース・ロース|脂とやわらかさを楽しむ部位
肩ロース
肩ロースは、肩から背中側にかけて取れる部位です。
赤身と脂の両方を感じやすく、適度に脂が付いた肉では、焼いたときの香ばしさと肉の旨みを一緒に楽しめます。
ジンギスカンでも存在感があり、羊肉を初めて食べる方から食べ慣れている方まで選びやすい部位の一つです。
ただ、同じ肩ロースでも毎回同じではありません。
一頭ごとに脂の厚さ、肉の大きさ、筋の入り方、赤身と脂のバランスが違います。
脂がしっかり付いた肩ロースもあれば、比較的赤身の印象が強いものもあります。
そのため、肉の状態を見ながら提供するときの厚みや整え方を変えることがあります。
脂も楽しみたい。
でも、脂だけではなく肉の味もしっかり感じたい。
そんな人には分かりやすい部位です。
ロース
ロースは背中側にある部位で、比較的やわらかく、きめ細かい食感を感じやすい肉です。
羊肉を食べ慣れていない方でも、
「ラムってこんなにやわらかいんだ」
と感じることがあります。
骨付きで提供されることの多いラックやラムチョップも、背中側の部位から取られます。
ただし、やわらかい肉だからこそ、必要以上に焼きすぎると良さが分かりにくくなります。
同じロースでも、厚みのある肉と薄く切った肉では火の入り方も違います。
部位名だけを見るのではなく、その一枚の厚さや脂の状態を見ながら焼くことも大切です。
肩ロースとロースだけでも、脂の入り方ややわらかさはかなり違います。
何種類かを一緒に食べる機会があれば、まずはこの違いを比べてみると、自分の好みが分かりやすいと思います。
モモ・ランプ|赤身の味を楽しみやすい部位
モモ
モモは後ろ脚まわりの大きな部位です。
肩ロースなどと比べると脂が控えめな部分も多く、赤身の味を感じやすいのが特徴です。
「脂よりも肉そのものを味わいたい」
という人には、モモが合うことがあります。
ただし、「モモ」という一つの名前で呼ばれていても、中にはいくつもの筋肉があります。
一つの大きな塊に見えても、分けていくと筋肉ごとにやわらかさや繊維の方向、厚みが違います。
そのため、一頭から扱う場合も「モモだから全部同じように切る」というわけではありません。
筋肉ごとに分け、繊維の方向を見ながら切っていきます。
特に赤身の肉は、切る方向や厚みによって食べたときの印象が変わりやすい部位です。
ランプ
ランプは腰からお尻にかけて取れる部位です。
赤身が中心ですが、比較的やわらかさも感じやすく、肉の旨みとのバランスを楽しめます。
状態によっては、少し厚みを持たせて切っても食べやすい部位です。
ここでも一頭ごとの差が出ます。
同じラムでも、
「今回は小ぶりだな」
「今回はしっかり肉が付いているな」
と感じるくらい、一つの部位そのものの大きさが違うことがあります。
だから私たちは、毎回まったく同じ形、同じ厚みに揃えることだけを目的にはしていません。
その肉を見ながら、どのくらいの厚みで食べると良さが出るのかを考えます。
赤身が好きな方でも、モモとランプでは食感ややわらかさの印象が変わります。
「赤身が好き」で終わらず、その中でどの部位が自分の好みなのか比べてみるのも、羊肉の楽しみ方の一つです。
ウデ・バラ|やわらかさだけではない羊肉のおもしろさ
ウデ
ウデは前脚まわりの部位です。
よく動く場所なので、ロースのようなやわらかさとは少し違い、肉らしい食感を感じやすい部位です。
その分、噛んだときに羊肉の旨みをしっかり感じられる肉もあります。
ウデも一枚の均一な肉ではありません。
いくつかの筋肉が集まっているため、筋や膜を見ながら分けて整えていきます。
単純に薄くすれば食べやすくなる、というわけでもありません。
肉によっては、ある程度厚みを残した方が、その部位らしい食感を楽しめることもあります。
バラ
バラはお腹から肋骨まわりにかけての部位です。
脂が付きやすく、赤身中心のモモとはかなり印象が変わります。
羊の脂が好きな人には魅力的な部位ですが、ここも一頭ごとの差が出やすいところです。
脂が厚い肉なら、どこまで残すか。
多すぎる部分は、どこまで整えるか。
すべて取ればいいわけでも、すべて残せばいいわけでもありません。
赤身と脂を一緒に食べたときにどう感じるかを考えながら整えていきます。
ウデやバラを食べると、やわらかさだけではない羊肉のおもしろさが分かりやすくなります。
一頭で見ると、「同じ部位でも同じではない」と分かる
私たちは、国産羊を一頭単位で仕入れることがあります。
一頭を実際に扱うと、部位ごとの違いだけでなく、一頭ごとの違いもよく見えてきます。
当然ですが、一頭から取れる部位の量は均等ではありません。
肩ロースも、ロースも、モモも、ランプも、それぞれ一頭から取れる量には限りがあります。
人気のある部位だけを多く取ることはできません。
肩ロースが先になくなったとしても、その一頭には別の部位が残っています。
だから店側には、
どの部位をどう切るか。
どう焼いてもらうか。
どの肉と組み合わせるか。
どうすれば、その部位のおいしさを伝えられるか。
を考える仕事が生まれます。
また、同じ肩ロース、同じモモであっても、一頭ごとに肉の大きさや脂の付き方、筋の入り方は違います。
部位名は同じでも、目の前にある肉まで同じではありません。
一頭ずつ扱っていると、それがよく分かります。
一頭から取れる肉を見ていると、人気のある部位だけではなく、それぞれの部位に違った良さがあることが分かります。
羊組でも、入荷した羊の状態を見ながら、できるだけその違いを楽しんでもらえる形で提供しています。

脱骨・整形・切り方で、部位の良さを引き出す
国産羊を骨付きの状態で仕入れる場合、骨から肉を外す「脱骨」という作業があります。
単純に骨を取れば終わり、という作業ではありません。
骨の形に沿って刃物を入れながら、できるだけきれいに肉を外していきます。
骨側に肉を多く残せば、その分だけ歩留まりは悪くなります。
一方で、時間をかければいいわけでもありません。
作業中の肉の温度管理にも気を配る必要があるため、正確さだけでなくスピードも必要です。

脱骨したあとも、
骨を外す
→ 部位や筋肉ごとに分ける
→ 筋や膜を整える
→ 提供する大きさ・厚みに切る
という工程があります。
この作業をしていると、
「モモの中でもここは違う」
「この筋肉はこの方向に繊維が走っている」
「今回はこの部位が大きい」
といった違いが見えてきます。
もちろん、羊組で扱うすべての羊肉を、毎回店側で脱骨しているわけではありません。
仕入先や入荷形態によっては、すでに脱骨・部位分けされた状態で届く肉もあります。
それでも、骨付きの状態から一頭を扱う経験があることで、その部位がどこにあり、どの筋肉とつながっているのかを実感として理解できます。
それが、最後に肉を切るときの判断にもつながります。
同じ肩ロースでも、肉の厚み、脂の量、筋の入り方は違います。
やわらかい肉なら、少し厚く切って食感を楽しむ。
赤身の繊維を感じやすい肉なら、繊維の方向を見ながら切る。
脂が多い部位なら、赤身と脂を一緒に食べやすい形にする。
「部位名を見て切る」のではなく、「目の前の肉を見て切る」。
これは、私たちが羊肉を扱う上で大切にしている考え方の一つです。
部位を知ると、ジンギスカンはもっとおもしろい
最初から羊肉の部位を全部覚える必要はありません。
何度か食べているうちに、
「脂がある方が好き」
「自分は赤身の方が好き」
「やわらかい肉が好き」
「少し歯ごたえがある方が好き」
と、自分の好みが少しずつ分かってきます。
肩ロースの赤身と脂。
ロースのやわらかさ。
モモの赤身。
ランプのバランス。
ウデの肉らしい食感。
バラの脂。
同じ羊でも、それぞれ違います。
一種類だけ食べるのももちろんいいですが、何種類か並べて食べると違いはさらに分かりやすくなります。
「この肉が好きだった」
「次は違う部位も食べてみたい」
そうやって自分の好みが分かってくることも、ジンギスカンのおもしろさの一つだと思っています。
麻布の羊・市ヶ谷の羊でも、ラムを中心に、その時々の入荷に合わせてさまざまな羊肉を扱っています。
この記事を読んで「部位による違いを実際に食べてみたい」と思った方は、ぜひ何種類か食べ比べてみてください。

まとめ|「一番いい部位」より、自分の好きな羊肉を見つける
羊肉には、肩ロース、ロース、モモ、ランプ、ウデ、バラなど、さまざまな部位があります。
それぞれ、脂の付き方、やわらかさ、食感、味の感じ方が違います。
さらに、同じ部位でも一頭ごとに大きさや脂の付き方は変わります。
だから私たちは、部位名だけで肉を判断しません。
一頭の大きさを見て、肉を見て、脂を見て、筋を見て、最後にどう切るかを決めます。
食べる側も、
「一番やわらかい部位はどれか」
「どの部位が一番いいのか」
だけで選ぶ必要はありません。
自分は脂のある肉が好きなのか。
赤身が好きなのか。
やわらかさが好きなのか。
少し歯ごたえがある方が好きなのか。
食べ比べていくと、自分の好みが少しずつ分かってきます。
羊肉は「ラム」という一つの味ではありません。
一頭の中にも、いろいろな味があります。
自分の好きな部位を探すことも、羊肉を楽しむ方法の一つです。
自分の好きな部位が分かると、次にジンギスカンを食べるときの楽しみ方も変わります。
気になる部位があれば、実際に食べながら違いを確かめてみてください。
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